子供の純粋な声を実現。ニュージーランド人が創り出す世界初のシェイクスピア「POP-UP GLOBE」劇場<後編>

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残念ながらイベント自体は終了してしまったのPOP-UP GLOBE劇場の後編。

前編を簡潔に書くと、シェイクスピア没後400年を記念した世界初の企画がニュージーランドで開催されたのだ。というのも企画ディレクターの1人であるニュージーランド人の愛娘が絵本から飛び出すグローブ劇場をみて「ここへ行きたい!」と言い出し、愛娘の願いを実現するためPOP-UPで第2グローブ座を復元してしまったのだ。さらには、80%以上がリサイクル可能素材で建設されているという何とも素敵なPOP-UPである。

詳しくはコチラ→子供の純粋な声を実現。ニュージーランド人が創り出す世界初のシェイクスピア「POP-UP GLOBE」劇場<前編>

今回は、グローブ座の歴史について面白い話をきいたので書いてみたい。本家の第2グローブ座は、初期グローブ座と比べ改良されており、初期グローブ座は直径100フィート、第2グローブ座は直径88フィートと12フィート縮小されている。 この縮小されたスペースというのは1階スタンディング席の部分で、初期グローブ座では600人収容可能だったが、第2グローブ座では300人になったようだ。縮小したことでステージと客席の距離感を短くし、より親密な空間を演出ができるようになった。さらには演者も声のボリュームを抑えることができたので喉のコンディションにも優しくなり、小さな声の演目も増やせたようだ。

pug11そして経済的観念や時代背景からもスタンティングスペースを縮小したと考えられており、当時のロンドンでは中層階級が増え始め、少し高いお金を払ってでも良席でエンターテイメントを観たい人が増えた時代だったようだ。

こういった考えの根底にあるのは「シェイクスピアは作家であり、演者であり、演出家であり、ビジネスマン」だったのだ。

当時の1階スタンディング席はPenny Stinkets (当時は1ペニーでパンが買えたので、それぐらい安い席しか買えない人たちの席という意味)と呼ばれており、わざと席を狭くし居心地を悪くすることで、人々をワンクラス上の席へ行きたいよう誘導を図ったのである。

pug9こうすることで、ただ劇を観るための場所ではなく階級を表す非常に重要な場所になったようだ。1階には下流階級、2階、3階席に中流階級、そしてステージ真上にあるボックス席は上流階級で、公演前には家族とランチを楽しんだり、はたまたビジネスの場として使用したりもあったようだ。

そして最も重要なのは「ひけらかす場所」だったというコト。その日のために新調したスーツやドレスにジュエリーを着飾りボックス席に座ることで、周囲にいる900人もの観客の注目を浴び、ここぞとばかりに見せびらかす場所でもあったようだ。

pug8さらに当時の演者には面白い契約があり、リハーサルに遅れたら罰金1シリング、本番に遅刻したら2シリング、出演できないぐらい前日お酒を飲みすぎていたら10シリング、そして衣装の持ち出しには40ポンドという大金が罰金として契約されていたのである。

最近、グローブ座跡地のリサーチ、発掘作業によってわかったことは、たくさんのヘーゼルナッツ成分が検出されたようで、1階部分にヘーゼルナッツを敷き詰めていたのかもしれないという説もある一方、当時の人々はヘーゼルナッツを食べながら鑑賞し殻をその場に吐き捨てていたという見方が有力な説として考えられているようだ。同時に同じ場所の土からは尿の成分も検出されており、劇をみながらその場で用をたしていたとも考えられているのだ。
pug5グローブ座の空が見える吹き抜け天井がまた面白い演出にもなっており、演目の1つであるTwelfth Nightの中で♪For the rain it raineth everyday♪(雨が毎日ふるからさ〜)と歌いだすと途端に雨が降り始めた奇跡の演出もあったようだ。

最後にステージの柱に施された地球儀の装飾たちには、なんとニュージーランドがないのだ。なぜかというと第2グローブ座があった400年前にはまだニュージーランドは発見されていなかった時代! そんなニュージーランドで初めてのPOP-UP GLOBEができたコトがとても面白く感じてしまう。

pug3残念ながら一度幕を閉じたポップアップグルーブ座だが、娘さんの願いを叶えたディレクターの強い信念や型にはまらないアイデアは、ニュージーランドの個性を伸ばすカルチャーに通じているように感じる。またどこかでPOP-UPグローブ座を見られる日を楽しみにしたい。

POP-UP GLOBE公式サイト